包括的レポート - 2025年6月
本レポートは、米国の金融政策における利下げの可能性が、米ドル、米国債券、およびコモディティ資産に与える影響について詳細に分析することを目的とする。近年、世界経済は様々な要因によって変動しており、特に米国の金融政策の動向は、世界の金融市場に大きな影響を与える。本稿では、最新の利下げ関連情報に基づき、各資産クラスへの具体的な影響を考察し、今後の市場動向を予測するための基礎情報を提供する。
重要なポイント: 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、利下げを急がない姿勢を繰り返し示しているものの、連邦公開市場委員会(FOMC)の当局者は年内2回の利下げを想定していることが明らかになっている。
特に、トランプ大統領による関税政策が経済に与える影響の不確実性が高く、関税引き上げが物価を押し上げ、経済活動の重しとなる可能性が指摘されている。しかし、インフレ圧力が抑制されたままであれば、早期の利下げの可能性も示唆されている。一方で、米経済は依然として堅調であり、急ぐ必要はないとの見方も存在する。
市場では、年内少なくとも2回の利下げがすでに織り込まれており、パウエル議長の証言中には米国債利回りが低下し、ドルは下落、円は対ドルで上昇する動きが見られた。
FRBのウォラー理事やボウマン副議長は、早ければ7月の次回FOMC会合での利下げの可能性に言及しており、特にウォラー理事は2019年の「予防的利下げ」が奏功した経験から、早期利下げを主張している。しかし、パウエル議長は関税インフレの帰趨を見極める姿勢であり、直ちに予防的利下げが実施される可能性は高くないとされている。現時点では、7月の利下げ確率は低いものの、9月の利下げの確度は高まっていると見られている。
米国の利下げが続くと、日米間の金利差が縮小し、相対的にドルの魅力が低下するため、円高ドル安が進行する傾向がある。例えば、2024年9月にFRBが0.5%の利下げを公表した後、日米金利差縮小の予測から円高ドル安が進行した。
通常、金利の低下は債券価格の上昇につながる。過去の利下げ局面では、景気後退懸念が高まったことなどから、株式と比べて安全性の高い資産である債券が選好される傾向が見られた。特に、年限の長い債券ほど金利低下時の価格上昇が大きくなると期待される。
ゴールドマン・サックスのアナリストは、FRBによる利下げがコモディティ(商品)セクターに即座にもたらす価格押し上げ効果は銅が最も大きくなるとの見方を示している。利下げを受けた米2年物金利の100ベーシスポイント低下による価格押し上げ効果は、特に銅(6%)が大きく、金と石油(ともに3%)が続く。
過去の米利下げ局面におけるドル円相場の動きは、「利下げそのもの」よりも、「利下げ後のイベント(国際的な通貨合意や金融危機、米中の政治的緊張など)」に、より強く影響を受ける傾向がある。今回は米利下げでドル安・円高の可能性が高いと予想されるが、利下げ後の予期せぬ金融危機の発生や、米中の政治的緊張の高まりなどには、十分な注意が必要である。
金価格と米国金利の間には、単純なセオリーとして「金利上昇=金価格下落」「金利低下=金価格上昇」の逆相関の関係があると言われるが、常にセオリー通りになるとは限らない。過去には、米金利が上昇する中で金価格も上昇したり、米金利が低下する中で金価格が下落したりする時期もあった。
金融市場における重要な要素はすべてつながっており、金利と為替がリンクし、それが金価格に影響を与える。したがって、現在進行形の市場のテーマや、米国をはじめとする主要国の金融政策、経済情勢などを理解し、その時点で金価格形成に影響を与えるテーマの比重を考察することが重要である。
総括: 米国の利下げは、米ドル、米国債券、コモディティ資産にそれぞれ異なる影響を与える可能性がある。
米ドルは利下げにより円高ドル安に傾く可能性があり、米国債券は金利低下により価格が上昇する傾向がある。コモディティ、特に銅は利下げによる価格押し上げ効果が期待される。しかし、これらの関係は単純ではなく、利下げ後の予期せぬイベントや、市場のテーマ、他の経済要因によって影響を受ける可能性があるため、今後の動向を注意深く監視する必要がある。
投資家は、単純な金利と資産価格の関係だけでなく、地政学的リスク、経済政策の変更、市場センチメントなど、複合的な要因を考慮した投資判断を行うことが重要である。